若者の日常生活は、東京も松山も同じくらい高い満足感―。10年にわたり愛媛県松山市と東京都杉並区の若者の志向変化を調査している中央大文学部の辻泉教授(40)=社会学=がこのほど、研究結果をまとめた。地域特性を生かした生活を送るすべを身に付け、スマートフォンを駆使して仲間とつながる。でも、どこか心が満たされない。地域差がなくなる一方で、そんな共通した姿が垣間見えるという。
 辻教授は2003~10年に松山大に勤務。若者の生活と文化に関する意識調査を05年、09年、15年の3回実施している。松山市と杉並区それぞれで20歳の男女を無作為に選び、各約200~300人の回答を集め、16年10月に福岡市で開かれた学会で地元志向の変遷などを発表した。
 分析結果によると、15年の松山での調査では「地方よりも東京のにぎやかな暮らしのほうが好きだ(上京志向)」という質問に、約27%が「あてはまる」「ややあてはまる」と答えた。「現在の生活に満足している(生活満足度)」の質問では「あてはまらない」「あまりあてはまらない」という否定的な回答は約27%で、10年前の約45%に比べて大幅に下がった。
 辻教授は「10年前に見られていた地域差がかなりの項目でなくなっていて興味深い。若者がより楽しい日常生活を送るには何が必要か、引き続き探っていきたい」と話している。